メラビアンの実験とは
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アメリカの心理学者アルバート・メラビアンは対面で行われるF2Fコミュニケーション(話し手の顔が見える環境での会話)には、3つの要素があると主張した。
その3つの要素とは、
- 言葉(Words)
- 声色・口調(Tone of voice)
- 顔の表情などの非言語的振る舞い
Nonverbal behaviour (e.g. facial expression)
そしてこの3つの要素がF2Fコミュニケーションにおいて、それぞれどれくらいの比率になっているのか、簡単な実験で調べてみた。
その実験とは、会話の3つの要素の内容が食い違っていたとき、人間は何を根拠に判断するのだろうか?という実験だ。
つまり「話す言葉」と「声の質」と「顔の表情」の三つの要素で、それぞれ異なった感情を表していた場合、聞き手はどの要素を判断の材料にするのか調べてみたのだ。
ある実験ではまず、「ありがとう」「うれしい」「悲しい」など感情を表すような単語をいくつか選んで、様々な声色・口調でテープに録音したものを用意した。
そして様々な表情の男女の顔写真をいくつか用意して、録音したテープと組み合わせて被験者に見せてみた。
例を挙げると、「悲しそうな表情」をした顔写真を見せて、「怒ったような口調」で録音された「『ありがとう』という音声」を流してみたわけだ。
そしてそれを見た被験者に、どういう風に受け取ったかを聞き取り、言葉と、声色と、表情のどれが判断材料になったのか調べてみたのだ。
その結果、多くの人が、話した内容ではなく、顔色や口調の方が相手の感情だと考えたという。
つまり話す内容と、表情や口調が異なっていた場合、非言語コミュニケーションが優先されていたわけで、これを「メラビアンの法則(ルール)」という。
7-38-55 ルール
顔が見えるF2F型コミュニケーションでは、言葉、声色・口調、そして顔の表情がそれぞれ食い違う表現になっていたとき、9割以上の人間が言葉ではなく、表情や声の調子を信用する。
これを「メラビアンの法則(ルール)」と呼ぶ。
そしてメラビアンのルールの中でも有名なのが、7-38-55 ルールと呼ばれるものだ。
これは「好意(liking)」をテーマにした食い違い実験で、判断材料にされた要素の割合を示したものだ。
この実験では、相手が自分のことを褒めたりけなしたりするような会話を取り上げて、3つの要素を食い違わせてみた。
たとえば、相手のことを褒めつつ目線を反らせていたり、相手を非難しつつ笑っていたり、という風に、三つの要素の不一致を作って行ったのだ。
「お前のせいじゃないよ」という言葉を「怒った口調」で録音し、「ガッカリした表情」の顔写真を見せて流すという具合である。
この実験の結果が実は、7-38-55だった。
つまり
- 言葉で判断したのは、7%
- 声色・口調で判断したのは、38%
- 顔の表情で判断したのは、55%
この実験では、好意や反感の表現で食い違いがあった場合、半分(55%)の人は、顔の表情から相手の感情を読みとろうとしていた。
そして4割弱(38%)の人が話し声の調子で判断し、言葉で判断しようとした人は、たった7%しかいなかった。
この実験結果を引用し、「人間は9割が見た目で判断する」なんて主張する人が現れ、それがウケたために世界中にこの比率が知れ渡り、7-38-55 ルールが浸透したということらしい。
ただこの7-38-55ルールについて、当のメラビアンは、単なるシンプルな実験の結果に過ぎないと言っており、言葉の力はこんなに小さくないとも言っているようだ。